自宅を売って損が出たときの特例が2027年末まで延長|譲渡損失を給与と差し引き・3年繰越|令和8年度改正
マイホーム(自宅)を売ると、買ったときより安くしか売れず、損(譲渡損失)が出ることがあります。土地や建物を売って出た損は、原則として給与などのほかの所得と差し引きできません。ただし、マイホームの売却で出た損については、条件を満たせば給与などの所得と差し引き(損益通算)でき、引ききれない分は翌年から3年間繰り越せる特例があります。
令和8年度(2026年度)の税制改正で、この特例が2年延長されました。
<この記事の監修者>

吉本 貴幸(よしもと たかゆき)
税理士法人吉本事務所
代表社員 税理士・行政書士
1973年生まれ 法学修士。1998年に現在の税理士法人の前身である個人税理士事務所に入所。2021年10月より現職。法人、個人事業のクライアントや相続税、贈与税の申告に関わる一方、税理士法人関連会社の社会保険労務士事務所、行政書士事務所、保険代理店のマネージメントにも携わる。経営に関する総合的な知識のもと、税務申告のみならず、事業運営・起業・法人設立のアドバイスも得意とする。税理士法人関連7サイトの総編集長・監修者として、最新の税務情報発信に努めている。
この記事のポイント
- マイホームを売って出た損を、給与などの所得と差し引ける特例が2つあります。
- どちらも、2027年(令和9年)12月31日までの売却に期限が延びました。
- 新しいマイホームに買い換える場合と、住宅ローンが残っている家を売る場合(買い換えなくてもよい)の2種類です。
- 買い換える場合は、2028年以後に住み始める新築の家が災害の危険がある区域に建っていると、対象外になります。
- 税金が戻る場合でも、確定申告をしないと使えません。
2つの特例のちがい
| 項目 | (1)買い換えた場合 | (2)住宅ローンが残っている家を売った場合 |
|---|---|---|
| 新しいマイホーム | 必要(床面積50㎡以上) | 不要 |
| 住宅ローンの条件 | 新しいマイホームに償還期間10年以上の住宅ローンがあること | 売買契約日の前日時点で、売った家に償還期間10年以上の住宅ローンの残高があり、売った金額がその残高を下回ること |
| 差し引ける損の上限 | 売って出た損(敷地が500㎡を超える部分の損は繰り越せない) | 住宅ローンの残高から売った金額を引いた額まで |
| 売った家の所有期間 | 売った年の1月1日時点で5年超 | 売った年の1月1日時点で5年超 |
| 繰り越せる期間 | 翌年以後3年間 | 翌年以後3年間 |
| 適用期限 | 2027年12月31日までの売却 | 2027年12月31日までの売却 |
どちらの特例も、繰り越して差し引く年の合計所得金額が3,000万円を超える場合は、その年は使えません。また、親子や夫婦など特別な関係のある人に売った場合や、前年・前々年に、自宅の売却で3,000万円の特別控除などを使っている場合も対象外です(相続した空き家の3,000万円控除は除きます)。
(1)買い換えた場合の主な条件
- 売った年の前年1月1日から売った年の翌年12月31日までに、新しいマイホームを取得すること
- 取得した年の翌年12月31日までに住み始めること
- 取得した年の12月31日時点で、新しいマイホームに償還期間10年以上の住宅ローンがあること
- 繰越控除を受ける年も、その年の12月31日時点で、新しいマイホームに償還期間10年以上の住宅ローンがあること
この特例は、新しいマイホームの住宅ローン控除と一緒に使えます。
(2)住宅ローンが残っている家を売った場合の計算例
例えば、3,200万円で買った家を2,000万円で売り、売買契約日の前日の住宅ローン残高が2,500万円だった場合を考えます(減価償却などは考えないで簡単にしています)。
- 売って出た損:3,200万円 − 2,000万円 = 1,200万円
- 差し引ける上限:住宅ローン残高2,500万円 − 売った金額2,000万円 = 500万円
この場合、給与などの所得と差し引けるのは500万円までです。
改正点:2028年以後に住む新築の家は「建てる場所」に注意
(1)の買い換えた場合の特例では、2028年(令和10年)1月1日以後に住み始める新築の家が、土砂災害特別警戒区域などの法令で定める災害の危険がある区域などに建っている一定のものは、対象外になりました。ただし、建築確認を受けた時点で建てる土地の全部が区域の外だった場合など、例外があります。確定申告のときに、区域の外に建てたことを示す「立地要件証明書」などを出す必要があります。
この見直しは、自宅を買い替えたときの別の特例(もうけが出たときの特例)と同じものです。詳しくは「自宅の買い替えで使える税金の特例が2年延長|2028年以降に入居する新築は「建てる場所」に注意」をご覧ください。
相続した家を売った場合は?
親から相続した家に住んでいて、その家を売った場合も、自分のマイホームとして条件を満たせば対象になります。所有期間は、原則として亡くなった方が取得した日から数えます。
一方、相続した家に住まずに空き家のまま売った場合は、マイホームではないため、この特例は使えません。その場合は、空き家の3,000万円控除などの別の特例を検討することになります。
確定申告での手続き
損が出て税金がかからない場合でも、この特例を使うには確定申告が必要です。主に次の書類を付けます。
- 譲渡所得の内訳書や、特例の計算明細書
- 売った家の登記事項証明書や売買契約書の写し
- 住宅ローンの残高証明書
繰越控除を受けるには、損が出た年について、必要な書類を付けた確定申告書を期限内に出し、その後も繰越控除を受ける年まで続けて確定申告をする必要があります。
よくある質問
Q.いつまでに売れば使えますか?
A.2027年(令和9年)12月31日までの売却が対象です。
Q.会社員でも使えますか?
A.使えます。給与所得と差し引くことで、源泉徴収された所得税が戻ることがあります。所得や控除の状況によっては、翌年度以後の住民税も少なくなる場合があります。
Q.住宅ローンを完済している家を売って損が出た場合は?
A.(2)の特例は使えません。新しいマイホームを住宅ローンで買う場合は、(1)の特例を検討できます。
<税理士からのひとこと>
ここ数年は、東京などと同じように京都市でも土地や住宅の価格が上がり続けてきました。そのため、住宅を売って譲渡損が出たというお話はあまり聞かず、当事務所の譲渡所得の申告も、利益が出たケースがほとんどでした。ただ、住宅価格が下がる局面になれば、譲渡損の申告をするケースも出てくると考えています。
譲渡損を給与などの所得と差し引ける申告は、あまり知られておらず、また制度の仕組みや実際の申告書の作成にあたっても、少し難しいところがあります。それでも、引ききれない分は翌年から3年間繰り越せるので、売却で利益が出ない場合でも、負担感を軽くする効果があります。子どもが大きくなったり、転勤や介護などで家を買い替える必要がある場合に譲渡損が生じるケースでも、負担を軽くできます。
まとめ
- マイホームを売って出た損を給与などと差し引ける2つの特例が、2027年12月31日まで延長されました。
- 買い換える場合は新しいマイホームの住宅ローン、買い換えない場合は売った家の住宅ローン残高が条件になります。
- 2028年以後に住む新築の家は、建てる場所によって対象外になります。
- 使うには確定申告が必要で、繰り越す場合は毎年の申告が必要です。
マイホームの売却や住み替えをお考えの方は、売る前の段階でご相談ください。
参考:財務省資料、国税庁資料
※2026年10月19日現在の公表資料に基づく一般的な説明です。分かりやすさを優先して表現を簡略化しているため、実際の適用には細かい条件があります。個別の事情により取扱いが異なる場合があります。