自宅の買い替えで使える税金の特例が2年延長|2028年以降に入居する新築は「建てる場所」に注意
今住んでいる家を売って、新しい家に住み替える方は多いと思います。家を売ると、もうけが出れば税金がかかり、損が出ることもあります。そんなときに税金を軽くできる「住み替えの特例」があります。
令和8年度(2026年度)の税制改正で、この特例が2年延長されました。あわせて、2028年(令和10年)以降に新築の家に住み始める場合は、家を建てる場所によっては特例が使えなくなるというルールが加わりました。
<この記事の監修者>

吉本 貴幸(よしもと たかゆき)
税理士法人吉本事務所
代表社員 税理士・行政書士
1973年生まれ 法学修士。1998年に現在の税理士法人の前身である個人税理士事務所に入所。2021年10月より現職。法人、個人事業のクライアントや相続税、贈与税の申告に関わる一方、税理士法人関連会社の社会保険労務士事務所、行政書士事務所、保険代理店のマネージメントにも携わる。経営に関する総合的な知識のもと、税務申告のみならず、事業運営・起業・法人設立のアドバイスも得意とする。税理士法人関連7サイトの総編集長・監修者として、最新の税務情報発信に務めている。
この記事のポイント
- 住み替えの特例は、2027年(令和9年)12月31日までに家を売った場合まで使えるようになりました(これまでは2025年末まで)。
- 2028年(令和10年)1月1日以降に新築の家に住み始める場合、その家が土砂災害や浸水などの危険があるとして指定された区域に建っていると、特例が使えません。
- 中古の家に買い替える場合や、2027年末までに新しい家に住み始める場合は、この新しいルールは関係ありません。
そもそも、どんな特例?
住み替えの特例は、大きく分けて次の2種類です。
(1)家を売って「もうけ」が出た場合
売った家のもうけにかかる税金を、今すぐ払わずに先送りできます。先送りした税金は、買い替えた家を将来売るときに、まとめて計算されます。税金がなくなるわけではない点に注意が必要です。
また、売った金額より安い家に買い替えた場合は、その差額に対応する部分のもうけについて、売った年に税金がかかります。
(2)家を売って「損」が出た場合
売って出た損を、その年の給料などのほかの所得から差し引いて、税金を減らせます。引ききれない分は、翌年から3年間繰り越せます。使えるのは、次のどちらかに当てはまる方です。
- 新しい家を返済期間10年以上の住宅ローンで買い、買った年の年末にローンが残っている方
- 売った家の返済期間10年以上の住宅ローンが、売った値段より多く残ってしまった方
新しい家を住宅ローンで買った方は、繰り越した損を差し引く年も、その年の年末にローンが残っている必要があります。また、売った家のローンが残った方の場合、差し引ける損は「売買契約日の前日のローン残高-売った値段」が上限です。
改正(1)使える期限が2027年末まで延びました
これらの特例は2025年(令和7年)12月31日までに家を売った場合が対象でしたが、2027年(令和9年)12月31日までに延長されました。
改正(2)新築の家は「建てる場所」が条件に
近年、大雨による土砂災害や浸水の被害が増えていることから、より安全な場所に家を建ててもらうために、新しいルールが加わりました。住宅ローン控除でも同じ見直しが行われています。
2028年(令和10年)1月1日以降に新築の家に住み始める場合、その家が次の区域に建っていると、住み替えの特例が使えません。
| 区域 | どんな場所か(イメージ) |
|---|---|
| 土砂災害特別警戒区域 | がけ崩れや土石流などで建物が壊れ、命に危険が出るおそれがある場所 |
| 急傾斜地崩壊危険区域 | 急な斜面で、がけ崩れのおそれがある場所 |
| 地すべり防止区域 | 地すべりが起きている、または起きるおそれがある場所 |
| 浸水被害防止区域 | 川があふれたときに、浸水で命に危険が出るおそれがある場所 |
| 災害危険区域 | 津波や高潮、出水などの危険が大きいとして、自治体が条例で指定した場所 |
ただし、次のような場合は特例を使えます。
- 家を建てる許可(建築確認)をとった時点で、土地全体が上の区域の外だった場合
- 「災害危険区域」だけに当たる場所では、市町村から建て方について勧告を受けたのに従わず、そのことを公表された家だけが対象外になります
- 中古の家に買い替える場合
- 2027年12月31日までに新しい家に住み始める場合
このルールは、2026年(令和8年)1月1日以降に家を売った方から対象になります。なお、「売った家の住宅ローンが残った場合」の特例は、新しい家を買うことが条件ではないため、このルールは関係ありません。
申告のときに必要な書類
2028年以降に新築の家に住み始める場合(その予定の場合を含みます)は、確定申告のときに、その家が立地の条件によって特例の対象外となる家に当たらないことを証明する「立地要件証明書」という書類を出す必要があります。
新築の家を買う・建てる前に、その土地が上の区域に入っていないかを、不動産会社やハウスメーカーに確認しておくと安心です。
立地要件証明書の取り方と、区域の調べ方
立地要件証明書は、建築士が発行します(登録された建築士事務所に所属する建築士に限られ、家の規模によっては一級建築士が必要です)。建築士は、家の場所が分かる図面(付近見取図や配置図など)と、建築確認がおりた日が分かる書類(確認済証など)をもとに、区域に当たらないかを確認します。
家を新しく建てる場合は設計を担当する建築士に、建売住宅などを買う場合は売主や不動産会社に、誰が証明書を用意するのかを早めに確認しておくと安心です。すでに建築確認を受けた家でも、後から確認して証明書を出してもらうことができます。発行には手数料がかかる場合があります。
土地が区域に入っているかどうかは、その土地がある都道府県や市区町村のホームページ・担当窓口で確認できます。国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」でも地図で目安を見られますが、区域の指定状況は自治体に確認するのが確実です。
特例を使うための主な条件
どちらの特例も細かい条件がありますが、主なものは次のとおりです。
| もうけが出た場合 | 損が出た場合 | |
|---|---|---|
| 売った家を持っていた期間 | 売った年の1月1日時点で、家・土地ともに10年を超えている | 売った年の1月1日時点で、家・土地ともに5年を超えている |
| 売った家に住んでいた期間 | 10年以上 | ― |
| 売った値段 | 1億円以下 | ― |
| 新しい家の広さ | 建物の床面積が50㎡以上、土地の面積が500㎡以下 | 新しい家を買う場合は、建物の床面積が50㎡以上(ローンが残った場合の特例は、新しい家を買わなくても使えます) |
| その他 | 家族など身内に売った場合は使えない | 合計所得金額が3,000万円を超える年は、繰り越した損を差し引けない |
また、もうけが出た場合は、「3,000万円の特別控除」など、ほかの特例と一緒には使えません。どれを選ぶと得になるかは、売った金額や今後の予定によって変わります。
よくある質問
Q.いつまでに家を売れば、特例を使えますか?
A.2027年(令和9年)12月31日までに売った場合が対象です。
Q.新しい家は、いつまでに買って、いつまでに住めばいいですか?
A.売った年の前年1月1日から、売った年の翌年12月31日までに買う必要があります。住み始める期限は、もうけが出た場合で売った年までに買ったときは売った年の翌年12月31日まで、それ以外は買った年の翌年12月31日までです。
Q.中古の家に買い替える場合も、「建てる場所」の条件はありますか?
A.ありません。今回の新しいルールは新築の家だけが対象です。ただし、もうけが出た場合の特例では、中古の家は「買う日以前25年以内に建てられた家」か「耐震基準を満たす家」である必要があります。
Q.2027年に家を売って、2028年に新築の家に住み始める場合はどうなりますか?
A.新しいルールの対象になります。土砂災害や浸水の危険がある区域に建つ家だと特例が使えず、確定申告では「立地要件証明書」が必要です。
Q.家を売るだけで、買い替えない場合でも使えますか?
A.もうけが出た場合の特例と、新しい家を住宅ローンで買う場合の損の特例は、買い替えが条件です。売った家の住宅ローンが売った値段より多く残った場合の特例は、新しい家を買わなくても使えます。
まとめ
- 住み替えの特例は、2027年12月31日までに家を売った場合まで使えます。
- 2028年以降に新築の家に住み始める場合は、土砂災害や浸水の危険がある区域に建つ家だと特例が使えません。
- その場合は、確定申告で「立地要件証明書」が必要です。
- 中古の家への買い替えや、2027年末までの入居なら、新しいルールは関係ありません。
住み替えの税金は、売るタイミングや住み始める時期で結果が変わります。ご自宅の売却や買い替えをお考えの方は、契約の前にご相談ください。
参考:財務省資料、国税庁資料、国土交通省資料
※2026年10月5日現在の公表資料に基づく一般的な説明です。分かりやすさを優先して表現を簡略化しているため、実際の適用には細かい条件があります。個別の事情により取扱いが異なる場合があります。