暗号資産の分離課税20%はいつから?相続した仮想通貨を売るときの注意点【令和8年度税制改正】
ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)について、令和8年度税制改正で、一定の取引による所得を申告分離課税とする制度が設けられました。
基本となる税率は、所得税15%と個人住民税5%を合わせた20%です。ただし、すべての暗号資産取引が対象になるわけではなく、適用開始時期にも注意が必要です。
暗号資産を相続した方に向けて、改正の内容と売却時の確認事項を解説します。
<この記事の監修者>

吉本 貴幸(よしもと たかゆき)
税理士法人吉本事務所
代表社員 税理士・行政書士
1973年生まれ 法学修士。1998年に現在の税理士法人の前身である個人税理士事務所に入所。2021年10月より現職。法人、個人事業のクライアントや相続税、贈与税の申告に関わる一方、税理士法人関連会社の社会保険労務士事務所、行政書士事務所、保険代理店のマネージメントにも携わる。経営に関する総合的な知識のもと、税務申告のみならず、事業運営・起業・法人設立のアドバイスも得意とする。税理士法人関連7サイトの総編集長・監修者として、最新の税務情報発信に努めている。
暗号資産の税金はどう変わる?
現行制度では、個人の暗号資産取引による利益は、原則として雑所得に区分され、給与などの所得と合算する総合課税の対象となります。そのため、所得の状況によって税負担が異なります。
改正後は、一定の暗号資産の売却などによる所得について、他の所得と分けて計算する申告分離課税が適用されます。
| 項目 | 改正内容 |
|---|---|
| 対象資産 | 金融商品取引業者登録簿に名称が登録されている暗号資産など、一定の「特定暗号資産」 |
| 対象取引 | 暗号資産取引業者への売却、または暗号資産取引業者への売委託による売却など |
| 基本税率 | 所得税15%・個人住民税5%の合計20% |
| 損失の取扱い | 一定の要件の下で翌年以後3年間の繰越控除 |
対象となるかどうかは、暗号資産の種類だけでなく、取引先や取引方法によっても判断する必要があります。
なお、対象外の暗号資産や、対象となる暗号資産取引業者への売却・売委託に当たらない取引(海外取引所や個人間の取引など)は、原則として引き続き給与などと合わせて税金を計算し、長く持っていても利益を半分にする扱いや譲渡所得の特別控除は使えず、損失を給与など他の所得から差し引くこともできません。
また、20%は付加税を含まない基本税率です。令和9年分以後は、所得税額に対して防衛特別所得税1%と復興特別所得税1.1%が課されるため、これらを含む通常の合計税率は20.315%となります。
分離課税はいつから始まる?
適用開始は、単純に「令和8年分から」ではありません。
財務省の解説では、前提となる金融商品取引法等の改正法の施行日の属する年の、翌年1月1日以後に行う特定暗号資産の譲渡から適用するとされています。
この金融商品取引法等の改正法は、2026年7月15日に成立し、7月23日に公布されました。ただし、法律の成立・公布と、制度の施行は別です。施行日は、公布日から1年を超えない範囲内で政令により定められます。
施行は公布日(2026年7月23日)から1年以内、つまり2027年7月22日までのどこかになるため、分離課税の開始は「2027年1月1日」か「2028年1月1日」のどちらかになります。
なお、2026年8月12日には罰則の引上げなど一部の規定だけが先に施行されていますが、分離課税の開始時期を決めるのは、暗号資産の規制を金融商品取引法へ移す本体部分の施行日です。本記事作成時点では、この施行日を定める政令は出ていないため、開始日は政令の公表後にあらためてご確認ください。
相続した暗号資産には、相続税と売却時の税金が関係する
暗号資産を相続した場合は、まず相続税の課税対象になります。ただし、実際に相続税が発生するかどうかは、他の遺産を含めた財産額や基礎控除などによって決まります。
また、相続した暗号資産を後日売却して利益が出れば、売却による所得について所得税・住民税の検討が必要です。今回の分離課税は、この売却時などの所得に関する制度です。相続税そのものが20%になる制度ではありません。
相続税の評価では、活発な市場がある暗号資産について、原則として、相続人等が取引する暗号資産交換業者の公表する相続時の取引価格を用います。
売却益は「相続時の時価との差額」とは限らない
相続した暗号資産を売る際に、特に注意したいのが取得価額です。
現行制度について、国税庁のFAQでは、相続により取得した暗号資産の取得価額を、亡くなった方が選択していた評価方法で死亡時に評価した金額としています。ここでいう評価は、総平均法や移動平均法による取得価額の計算です。相続税で使う時価とは区別する必要があります。
例えば、現行制度の下で、次の暗号資産を相続して全量売却したとします。
- 売却益の計算に使う取得価額:100万円
- 相続時の時価:500万円
- 売却額:550万円
手数料などを考慮しなければ、売却による利益は「550万円-100万円=450万円」です。「相続してから50万円しか値上がりしていない」という理由で、利益を50万円と計算できるわけではありません。
この例は現行制度の説明です。改正後の売却についても、相続税評価額をそのまま取得費に使うのではなく、適用される制度と取得費の根拠を確認する必要があります。
損失は3年間繰り越せるが、株式とは通算できない
改正後は、対象となる特定暗号資産の譲渡で生じた損失について、その年に控除しきれない金額を翌年以後3年間繰り越し、特定暗号資産の譲渡所得等から控除できる制度が設けられます。
ただし、給与所得や株式の売却益などから差し引くことはできません。また、繰越控除には、損失が生じた年の申告、その後の継続した確定申告、所定の明細書の添付などが必要です。
相続した暗号資産を売却する前に確認したいこと
売却を検討するときは、次の資料をそろえておきましょう。
- 暗号資産の種類・数量と保管先
- 亡くなった方の購入履歴や年間取引報告書
- 過去の確定申告書や取得価額の計算資料
- 相続時の価格が分かる資料
- 売却予定日・売却先・取引方法
取得価額が分からないまま売却すると、税額の見積りが難しくなります。また、制度開始を待つ間にも価格は変動するため、税率だけで売却時期を判断せず、納税資金などを含めて検討することが大切です。
まとめ
暗号資産の分離課税は、一定の取引による所得の課税方法を変える制度です。相続した暗号資産の売却では、適用開始時期、対象取引への該当性、取得価額の3点を確認することが重要です。
相続税の目安は税額・報酬シュミレーターでも確認できます。暗号資産を含む相続財産の申告については、売却前にご相談ください。
参考:財務省「令和8年度 税制改正の解説」、金融庁公表資料、国税庁資料、関係法令
※2026年10月29日時点で確認した公表資料に基づく一般的な説明です。個別の事情や適用時期により取扱いが異なります。