相続時精算課税の110万円と2,500万円の違い|計算例・届出・申告方法
このシリーズ:第1回:改正の背景 / 第2回:計算と申告 / 第3回:220万円と注意点
相続時精算課税の「年110万円」と「累計2,500万円」は、役割が異なります。年110万円の基礎控除部分は相続時にも加算されませんが、2,500万円の特別控除を使った部分は原則として相続時の加算対象です。ここでは計算例とともに、届出・申告の違いを解説します。
年110万円以下なら贈与税の申告が不要
2024年(令和6年)1月1日以後、相続時精算課税を選択した人が特定贈与者から贈与を受けた場合、その年の贈与額から110万円を控除できるようになりました。「特定贈与者」とは、その人からの贈与について相続時精算課税を選択した贈与者のことです。
すべての特定贈与者から受けた贈与の年間合計が110万円以下で、ほかに申告が必要となる贈与がなければ、その年の贈与税の申告は不要です。
ただし、初めて相続時精算課税を選択する年には、贈与額が110万円以下で申告が不要であっても、期限内に「相続時精算課税選択届出書」と必要書類を提出しなければなりません。110万円以下だから何もしなくてよい、という意味ではありません。
提出期間は原則として、最初に適用を受ける贈与の翌年2月1日から3月15日までです。申告が不要なら届出書を単独で提出し、申告が必要なら申告書に添付します。
110万円は2,500万円の特別控除とは別枠
改正後の計算順序は、次のとおりです。
1. その年に特定贈与者から受けた贈与額から、基礎控除を差し引く(特定贈与者が1人なら年110万円、複数なら後述の按分額)
2. 残額から、その贈与者について残っている特別控除を適用する(累計2,500万円が限度)
3. さらに残額があれば、一律20%の贈与税を計算する
例えば、父から1年間に現金800万円の贈与を受け、その年の贈与はこれだけとします。父からの贈与について相続時精算課税を選択し、特別控除を過去に使っていなければ、計算は次のようになります。
| 計算・手続 | この例での取扱い |
|---|---|
| 基礎控除後の金額 | 800万円-110万円=690万円 |
| 今回使う特別控除 | 690万円 |
| 贈与税額 | 0円 |
| 贈与税の申告 | 必要。特別控除の適用には期限内申告が必要 |
| 翌年以降に残る特別控除 | 2,500万円-690万円=1,810万円 |
110万円以下で申告が不要になる場合と、特別控除によって税額が0円になる場合では、申告の必要性が異なります。
ただし、父の相続時には、110万円を差し引いた690万円が、原則として贈与時の価額で相続税の課税価格に加算されます。
110万円は「贈与者ごと」ではなく「受贈者1人につき年110万円」
父と母の両方について相続時精算課税を選択していても、基礎控除が110万円ずつ、合計220万円になるわけではありません。
同じ年に2人以上の特定贈与者から贈与を受けた場合、相続時精算課税の基礎控除は合計110万円です。その110万円を、それぞれの特定贈与者から受けた贈与額に応じて按分します。
例えば、父母の双方について相続時精算課税を選択し、同じ年に父から現金200万円、母から現金100万円を受け取った場合、110万円を200対100の割合で振り分けます。父母それぞれに110万円を差し引く計算にはなりません。
一方、2,500万円の特別控除は贈与者ごとの枠です。年110万円の基礎控除と、同じ単位で数えないように注意しましょう。
改正前に選択済みの人も、2024年以後の贈与から対象
2023年以前に相続時精算課税を選択した人にも、2024年1月1日以後の贈与には新しい基礎控除が適用されます。選択届出書を改めて提出する必要はありません。ただし、2023年以前に受けた贈与にさかのぼって年110万円を差し引くことはできません。
まとめ
年110万円の基礎控除と累計2,500万円の特別控除は、計算する単位も申告の扱いも異なります。特に「贈与税が0円だから申告不要」とは限りません。初年度の選択届出と、特別控除を使うための期限内申告を区別しましょう。
このシリーズ:第1回:改正の背景 / 第2回:計算と申告 / 第3回:220万円と注意点
※2026年9月17日現在の法令・公表資料に基づく一般的な説明です。個別の事情により取扱いが異なる場合があります。