山林を売ったときの「森林計画特別控除」が2028年末まで延長|相続した山林の伐採・売却と税金|令和8年度改正
親から山林を相続したものの、手入れができず、木を伐って売るか迷っている方は少なくありません。京都市内でも、京北地域など市の北部には山林が広がっています。
山の木を伐採して売ったときの税金には、負担を軽くするしくみがいくつかあります。そのひとつ「森林計画特別控除」が、令和8年度(2026年度)の税制改正で2年延長されました。
<この記事の監修者>

吉本 貴幸(よしもと たかゆき)
税理士法人吉本事務所
代表社員 税理士・行政書士
1973年生まれ 法学修士。1998年に現在の税理士法人の前身である個人税理士事務所に入所。2021年10月より現職。法人、個人事業のクライアントや相続税、贈与税の申告に関わる一方、税理士法人関連会社の社会保険労務士事務所、行政書士事務所、保険代理店のマネージメントにも携わる。経営に関する総合的な知識のもと、税務申告のみならず、事業運営・起業・法人設立のアドバイスも得意とする。税理士法人関連7サイトの総編集長・監修者として、最新の税務情報発信に努めている。
この記事のポイント
- 森林計画特別控除は、2028年(令和10年)12月31日までに伐採・売却した分まで使えるようになりました(これまでは2026年末まで)。
- 市町村などの認定を受けた「森林経営計画」に基づいて伐採・売却した場合に、収入の20%(2,000万円を超える部分は10%)を差し引けます。
- 相続した山林は、原則として亡くなった方が持っていた期間を引き継いで判定します。
そもそも「山林所得」とは?
山林所得とは、山の木を伐採して売ったり、立木(生えたままの木)のまま売ったりしたときの所得です。ただし、次の点に注意が必要です。
(1)山林を取得してから5年以内に売った場合は、山林所得ではなく、事業所得か雑所得になります。
(2)山を土地ごと売った場合、土地の部分は山林所得ではなく、譲渡所得になります。
山林所得は給料などほかの所得とは合算せず、「5分5乗方式」という独自の方法で税金を計算します。所得を5分の1にして税率を当てはめ、その税額を5倍するため、長年育てた木を一度に売っても税率が上がりにくいしくみです。また、最高50万円の特別控除もあります。
経費の記録がなくても使える「概算経費」
代々持っている山林は、植林や下草刈りなどの費用の記録が残っていないことがよくあります。
そこで、売った年の15年前の12月31日以前から持ち続けていた山林であれば、実際の経費を集計しなくても、収入(伐採費・運搬費などを差し引いた後の金額)の50%を経費とみなせます。伐採費・運搬費などは、その上に経費として加えられます。
たとえば、2026年中に伐採・売却した場合は、2011年12月31日以前から持ち続けていれば対象です。売った日から単純に15年を数えるわけではありません。
森林計画特別控除のしくみ
市町村などから認定を受けた「森林経営計画」に基づいて木を伐採・売却した場合に、経費とは別に、さらに一定額を差し引ける制度です。差し引ける金額は、次の(1)と(2)のうち少ない方です。
(1)収入(伐採費・運搬費などを差し引いた後の金額)の20%
※収入が2,000万円を超える部分は10%
(2)収入の50%から、実際にかかった経費(伐採費・運搬費などを除く)を差し引いた残り
上の「概算経費」を使う場合は、(1)の金額になります。
計算例
伐採費などを差し引いた後の収入が1,600万円で、概算経費を使う場合を比べます。所得税のみの計算で、住民税・復興特別所得税などは含めていません。また、基礎控除などの所得控除は、ほかの所得からすべて差し引き済みと仮定しています。
| 項目 | 森林計画特別控除なし | 森林計画特別控除あり |
|---|---|---|
| 収入(伐採費などを差し引いた後) | 1,600万円 | 1,600万円 |
| 概算経費(50%) | ▲800万円 | ▲800万円 |
| 森林計画特別控除(20%) | ― | ▲320万円 |
| 特別控除 | ▲50万円 | ▲50万円 |
| 山林所得 | 750万円 | 430万円 |
| 所得税(5分5乗方式) | 37万5,000円 | 21万5,000円 |
この例では、所得税が16万円軽くなります。
使うための手続き
- 伐採する山林が、認定を受けた森林経営計画の対象になっていることが前提です。
- 伐採・売却が計画に基づくものであることについて、市町村長など(計画を認定した人)の証明を受けます。
- 確定申告で、その証明書、伐採・売却した山林の測量図、森林経営計画書の写しなどを提出します。
お持ちの山林が森林経営計画の対象になっているかは、山林のある市町村や森林組合で確認できます。
よくある質問
Q.いつまでに伐採・売却すれば使えますか?
A.2028年(令和10年)12月31日までに伐採・売却した分(令和10年分の山林所得)まで使えます。
Q.相続した山林でも、概算経費は使えますか?
A.要件を満たせば使えます。「売った年の15年前の12月31日以前から持ち続けていたか」は、亡くなった方が持っていた期間を引き継いで判定します。山林所得に当たるかを決める「取得から5年以内」の判定も同じです。ただし、限定承認による相続などは取扱いが異なります。
Q.森林経営計画の対象になっていない山林は、どうなりますか?
A.森林計画特別控除は使えません。ただし、概算経費(売った年の15年前の12月31日以前から持っていた場合)と最高50万円の特別控除は使えます。
Q.山を土地ごと売った場合は?
A.立木の部分は山林所得、土地の部分は譲渡所得として別々に計算します。森林計画特別控除は、立木の部分だけが対象です。
山林と一緒に、相続した空き地などの土地を売る場合は、低未利用土地の100万円控除の記事も参考にしてください。また、相続税の目安は税額・報酬シュミレーターで試算できます。
まとめ
- 森林計画特別控除は、2028年12月31日までに伐採・売却した分まで使えます。
- 森林経営計画に基づく伐採・売却なら、収入の20%(2,000万円超の部分は10%)を差し引けます。
- 売った年の15年前の12月31日以前から持っていた山林は、経費の記録がなくても概算経費(50%)を使えます。相続した山林は、原則として亡くなった方の所有期間を引き継ぎます。
山林の売却は、立木と土地の分け方や経費の計算方法で税額が変わります。山林を相続された方、伐採・売却をお考えの方は、契約の前にご相談ください。
参考:財務省資料、国税庁資料、林野庁資料
※2026年10月28日現在の公表資料に基づく一般的な説明です。分かりやすさを優先して表現を簡略化しているため、実際の適用には細かい条件があります。個別の事情により取扱いが異なる場合があります。